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【微ネタバレ】「判決、ふたつの希望」を観る前の必要知識【オススメ映画レビュー】

今回みてきたのは、「判決、ふたつの希望(原題:L'INSULT)」。

 

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2017年ベネチア国際映画祭 最優秀男優賞受賞。

2018年アカデミー賞 外国語映画賞ノミネート作品です。

歴史問題を扱った傑作。

 

教養が深くない自分にとって、テーマの強い映画に教養を与えてもらうことはよくある事なんですが、今作もそうでした。

 

今年一、眉間にしわを寄せて見た作品。

ただ、見る前に知っておくべき歴史が沢山あるので、それも交えて書いていきます。

 

 

 

1.あらすじ


舞台はパレスチナ内戦終結後のレバノン。自動車整備工場を営むトミーは、家のすぐ外で不法建設の改修工事を行うパレスチナ人ヤーセルとほんの小さな諍いで衝突します。


その際、「クズ野郎」という暴言を吐かれたトミーは謝罪を求めますが、ヤーセルは頑なに謝罪を拒みます。


後日ヤーセルは周りの説得から一度謝罪に訪れるも、今度はトミーからの暴言にカッとなり暴行。トミーはついに訴訟に乗り出す事に。


小さな諍いから始まった法廷論争は、終息しつつあった紛争・内戦の過去を表面化し、宗教・大衆・政府を巻き込んだ大論争へと発展。


両当事者の心情と共に激化する法廷劇、そして、両者が過去と未来の自分自身と向き合い歩むヒューマンドラマです。

 

 

2.各々が抱える過去について

今作を見るにあたり、僕が鑑賞しづらくなった原因として、歴史問題への浅識がありました。

 

なぜ小さな衝突が国を揺らがす大問題へと変化したのか。それは、各々が抱える過去を捨てきれずに生きているからです。

 

それは普遍的でありどの国でも大小関わらず起こりうることなのですが、軽く中東問題を知っておくとより深く心情に入り込めます

 

その辺を調べてまとめてみたので、参考にしてみてください。

 

パレスチナ難民

1948年に、イスラエルが建国宣言をすることで、第一次中東戦争が起こります。

パレスチナでは沢山の村が襲われ、70万に以上が難民となり、周辺諸国へのがれます。

そのひとつがヨルダンでした。

特にレバノンに逃れたパレスチナ難民は宗教問題もあり、生活環境も悪く、レバノン国民からは差別の目を向けられています。

シャロン

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彼は代15代イスラエル首相です。パレスチナに対して強硬派として知られイスラエル軍による大規模の破壊活動を指示するなど、過激な政策をとったとして知られています。

過去にはガリラヤ平和作戦としてレバノンに侵攻。サブラ・シャディーラの虐殺事件を指示しました。 

サブラ・シャディーラ事件

1982年に起こったイスラエル国防軍の、パレスチナ難民キャンプでの虐殺事件

半シリア派でイスラエルと懇意だった大統領がレバノンで当選したのですが(バシール・ジュマイエル)、就任直前に何者かに爆弾により暗殺されました。これをイスラエルパレスチナ解放機構の犯行とし、民兵組織が、パレスチナ人への報復を誓ったのが背景にあります。 

ダムールの虐殺

レバノン内戦中に起こった事件の一つで、パレスチナ解放機構PLO)などのムスリム武装集団が、キリスト教徒の村ダムールを襲撃し500人以上の民間人が虐殺されました。 

レバノンの宗教について

レバノンには多数の宗教・宗派が混在していて、主にキリスト教イスラム教、併せて18の宗派があります。

 

簡単に歴史を知っていると、宗派が分かれているがけで政治的立場や利害が合わず、衝突や確執を生みます。

 

今作でも、まさにその宗教に属する国民が虐殺され、その復讐の連鎖が続いた中で生活する者達にフォーカスが当てられています。

 

特にこの作品のレバノンで起こった内戦については、戦犯として裁かれた人物はおらず、勝者も敗者も混在し暮らしています。

各々が都合の悪い歴史を胸に秘めたままいるなかで起こった衝突なので、国際問題にまで発展してしまったのだとも思えます。

 

具体的な数や言葉は間違ってるかもしれませんが、だいたいそんな感じです。

 


3.見所


今作の見所は、虐殺を経て終結する戦争・内紛を経験した国民が、その後の生活の中で起こりうる現実を人間味豊かに表現している点にあります。

 

戦争の経験によりぬぐいきれない憎しみは、昇華されることなく遺族や被害者達の心に根付いていて、それはつまりその人の人格となり生活に影響を与えています


それでも国家は変化し続けるものであり、それを理不尽でも受け入れなければいけない。

 

ただ、それを受け入れられない頑固者が、今作の主人公二人です。

 

特に宗教については根付いたものなので、キリスト教徒のトミーと、パレスチナ人のヤーセルには小さなきっかけで爆発してしまったのでしょう。

 

分かりやすくシンプルに言えば、過去の憎悪を抱えていても、それでも人は生きなければならない、という背景。

 

それを法廷を舞台に大きく見せる中で、当事者二人が法廷外で関わり合うシーンに、人間としての暖かさを感じ、映画というエンターテイメントとしての面白さがある作品でした。

 

浅識のまま見たので、ダムール虐殺など知らない事件があって、後追いする形で改めて映画を噛みしめているのですが、この歴史に深く関わっていた国民には、この映画はどう映ったのでしょうか。

 

戦争には善悪両面が存在すること。


戦争終結後、彼らが生きていく為には、判決だけではなく、

作品を見た後の我々がいかに毎日と向き合っていくか

に、この映画は帰結します。

  

 

未見の方は、簡単にですが時代背景を頭に入れて、見てみると面白いです。

 

4.私的感想

んで、ここからは私的感想になるのですが、今作は二人のおじさんが衝突し、それぞれがプライドから相手を許せず大ごとになる、という映画です。

 

宗教問題ですから、大きくはいえませんが、くだらない事で人と衝突することって誰にでもあると思います。

誰かに悪口を言われてるのを聞いたり、急に怒られたり、嘘つかれた人に笑顔で話されたり、いじめられたり。

 

僕はこういう映画をみたときに毎回、こういうこういう場面のとき自分はしっかり人と向き合おうと思います。

他人を否定することはしませんが、あくまで自分の生き方として。

 

誰かと意見が合わなくても、それはその相手のほんの一部分であると自分に言い聞かせます。表面化しない部分なので、難しいのですが、そこを考えることで、しっかりと相手をみて接することが出来るような気がするのです。

 

こんな悪い奴でも、誰かにとっては大切な人なのかもしれない。

だから、そこでその人が幸せなら、自分が苦しくても許そう。

 

そんな気持ちをこれからも持てるように、生きることが出来れば、自分の大切な人ともしっかりと向き合って、何を言われても笑顔でいれるような気がします。

 

そんなことを、今作を観たあとも考えながら歩きました。

 

 

 

最後まで読んでくれた方、ありがとうございました。